就労移行支援事業所とは
「就労移行支援事業所」とは、障害のある方の一般企業への就職をサポートする通所型の福祉サービスです。
就労移行支援事業所は、地方自治体から指定を受けてサービスを提供しており、全国には約3300ヵ所以上の就労移行支援事業所があります。
あなたのお住まいの地域にも、おそらく就労移行支援事業所があるのではないでしょうか。
次に就労移行支援事業所で受けられるサービスについて説明します。
【就労移行支援事業所で受けられるサービス】
就職前は通いながら一般企業にて働き続ける力を身に付ける職業訓練や就職活動のサポート、就職後は職場定着のサポートを受けることができます。
職業訓練では、職業スキルはもちろん体調管理やコミュニケーションなど働き続けるために必要な知識を研修や職場実習で学ぶことができます。
また、就職活動ではキャリアカウンセリングや応募書類作成、面接対策などのサポート、職場定着支援では入社後の相談対応や企業への環境調整依頼などを行っています。
【就労移行支援事業所を利用できる方】
就労移行支援事業所を利用するために必要な条件は次の4つです。4つすべての条件を満たしている方が利用できるサービスです。
①一般企業で働くことを希望する方
※就労継続支援A型やB型等の福祉的な支援を受ける就労を目指す場合は当てはまりません。
②身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがあること
※障害者手帳を持っている方はもちろん、持っていない方も医師の診断や自治体の判断によって利用できます。
③18歳以上で満65歳未満の方
④離職中の方(例外あり)
就労移行支援事業所の就職事例
「就労移行支援事業所」の利用を通して一般企業への就職が決まった事例を2つ紹介します。
【40代、抑うつ・広汎性発達障害・ADHD、WEB制作職として入社、通所6ヵ月】
就労移行支援事業所に通所するまで:私は数年前に抑うつ・広汎性発達障害(PDD-NOS)・ADHDの診断を受けました。それまで漠然とした生きづらさは感じていたものの、それを障害だと自覚しないままクローズで働いていました。しかし、あるとき体調を崩したのをきっかけに障害者枠での就労を視野に入れ、就労移行支援事業所に通うことにしました。
就労移行支援事業所のココがよかった:半年間の通所を経て、私は自身の障害と向き合い、未来を生きるための考え方や行動を身につけることができました。
例えば、ストレス源となる出来事に出遭ったときも、客観的な視点で事実だけを捉え、悩みが深みにはまる前に気持ちを切り替えられるようになりました。
また、以前は人並みでありたいがために苦手なことも必死で取り組み、空回りしていましたが、今は素直に、好きなことにかかわって心を満たし、自己肯定感を高めていきたいと考えるようになりました。就労移行支援事業所での半年間は、自身の障害に無自覚だった自分が、その障害と向き合い、受け入れるために必要な時間だったと改めて思います。
言葉にできない生きづらさを感じていた日々の中で、今までとは違う1歩をようやく踏み出せた思いです。障害を抱えたことで、将来が立ちゆかなくなっている方、本当に自分に合った仕事を探したい方、少しだけ勇気を出して体験通所していただければと思います。
【30代 、発達障害(LD)、人材派遣会社へ庶務職として入社、通所期間25ヶ月】
就労移行支援事業所に通所するまで:以前は人と比べてしまいその都度、些細なことでマイナス思考におちいる日々を送っていました。仕事や私生活も上手く行かず、仕事をやめてからは昼夜逆転して全体的に不規則な生活をしていました。悩みを相談できる人もおらず漠然とした不安感だけが募っていました。
就労移行支援事業所のココがよかった:事業所に通うことで日中活動を行うようになり生活にメリハリがついたことはもちろん、日頃の悩み相談や生活の基盤を固める中で自分自身が大きく変わったポイントが2つあります。
それは①安定して業務を続けるための意識改革です。真面目なため頑張りすぎで体調を崩す方も多く中々難しいですが、自分自身を大切にできる様に「頑張り過ぎない」ことをいま頑張れる様になりました。
そして、②納得して会社を選べる様になりました。私は通所中に複数社から内定を頂いたのですが断ったことがあります。それは職場の雰囲気や業務の難易度が自分には合わない企業だったためです。とても勇気がいりましたが、その決断をしたことで納得した職場を選ぶことができました。
数々の問題が出てきた際、職員だけでなく同じ通所者である仲間と励まし合いながら数々の困難を乗り切ることができました。
就労移行支援事業所の特徴
就労移行支援事業所の特徴をご理解いただくために、メリットとデメリットをお伝えします。
【メリット】
就労移行支援事業所を利用するメリットは次の5つです。
①企業が最も重要視する「健康管理の力」を身につけることができる
②働き続ける上で課題となる「障がい」への対応策を身に着けることが出来る
③希望する就労に向けた専用のプランを障害者就労に詳しいスタッフに立ててもらうことができる
④通いながらスキルアップ研修やトレーニングを受けることが出来る
⑤就職サポートはもちろん、職場定着サポートも受けることが出来る
【デメリット】
一方の、就労移行支援事業所を利用するデメリットは次の4つです。
①障害者雇用枠での就職を希望する方向けのプログラムや就職支援メニューを用意している事業所が多いため、一般枠での就職のみを希望される方は、提供されるプログラムや就職支援メニューが希望する内容と合致しない可能性がある
②就労移行支援事業所の利用料が発生する場合がある(無料で利用できる場合もあり)
③通所期間中は短時間であってもアルバイト等の就労をすることができず(例外あり)就業準備に専念する(実習等で職業体験を通してスキル向上や適性の把握をすることは可能)
④求人紹介を受ける場合は、ハローワークや人材紹介会社を利用する必要がある(就労移行支援事業所は、求人紹介のサポートを受けられる場所ではなく、働き続ける力や入社後に活躍するための力を身に着ける場所です。ただし、就労移行支援事業所独自のネットワークで企業見学や、企業との座談会、企業実習などの機会をきっかけに就職に繋がるケースも多くあります)
就労移行支援事業所のメリットとデメリットを理解して上手に活用しましょう。
就労移行支援事業所の特徴